火災によるビル避難対策指導(以下「SRC」という)業務
SRC業務とは、令和3年12月に発生した大阪市北区ビル火災(以下「北区ビル火災」という。) を踏まえ、類似火災による人的被害の防止を目的として行う業務のことをいいます。
総務省消防庁の当該火災事案に係る報告書では、直通階段が一つの建築物は、構造上、リスクを常に抱えており、そのリスクを平時から下げる対策が必要とされていることから、この再発防止に向けた対策として、大阪市消防局が進めているSRCを当協会が受託し、SRC事業として実施しているものです。
なお、SRC業務は、消防法施行規則(昭和36年4月1日自治省令第6号)第23条第4項第7号ヘに規定する防火対象物(以下「特定一階段 等防火対象物」という。)の所有者、管理者、占有者、防火管理者、従業者及び居住者等(以下「関係者等」という。)を対象としています。
具体的には、特定一階段等防火対象物において、北区ビル火災と類似した火災の発生により、唯一の階段が使用できないなどの危機的な状況に陥った場合においても、自らの命を守る(セルフレスキュー)ための自己救命方策などを習得してもらうことで、平素の防火防災意識を高めてもらい、万一の際においても、自主的に行動できる知識や初動対応力を備えていただくため、資格を有した当協会職員が対象となる建物や店舗におもむいて、実地に指導等させていただきます。
SRC業務には、「現況調査」と「コーチング」の2つの業務があります。
1.「現況調査」
「現況調査」とは、どのような命を守る避難行動が可能か実態を把握するため、対象物ごとの建物構造上の危険性を調査させていただき、当該対象物の店舗等の用途、階数、消防用設備等、避難経路、一時避難が可能となる場所の有無等を確認させていただきます。
2.「コーチング」
「コーチング」とは、現況調査の結果等から、直通階段が一つの建物で実際に働いておられる店長や従業員、建物の管理者、オーナーなどの関係者等に対して、店舗等の特徴に応じて、具体的な自己救命方策等を習得していただくため、実際にお勤めの店舗を活用するなどして実施する助言及び指導をいい、次の3種類のコーチングがあります。
- ●基本コーチング
- 基本コーチングとは、「直通階段が一つの対象物の特徴」、「特殊な火災発生時の危険性、避難の困難性」等について認識していただくための指導等をいいます。
- ●応用コーチング
- 応用コーチングは、各店舗等における「階段が使用できない場合の避難方法」、「消防用設備等の設置状況・使用可否・使用方法」等について認識していただくための指導等をいいます。
- ●実技コーチング
- 実技コーチングは、ガソリンを使った放火など特殊な火災発生を想定した「避難上有効な施設等を使った避難行動」、「緊急時のお客様の避難誘導方法」、「お勤めの店舗等における火災・煙の状況の疑似体験」等を通じて、危機的な状況から自身の命・店舗等の利用者(お客様)の命を守るための技術を習得していただくための指導等をいいます。
「SRC受講済証」配布しています。
避難するための階段が一つしかない建物で働いておられる事業者等に対し、SRC(セルフレスキューコーチング)実施後、「SRC受講済証」を配布しています。この「SRC受講済証」は、SRCを受講された証だけでなく、受講された皆様から今回受講できなかった従業員の方などへ、SRCについての知識、技術、習慣を伝承していただき、SRCの裾野を広げることを目的としています。